保育園児シックハウス症候群解決のための堺市へのお願い

堺市長 木原敬介 殿

大阪府保険医協会皮膚科部会
シックハウス対策室長 笹川征雄
2002年7月25日

真夏の候、ますます御健勝のこととお喜び申し上げます。
私たち保険医協会は府下の開業医などが約8割の6200人あまりが加入している開業保険医の団体です。わたしたちはこの団体を構成する皮膚科部会・シックハウス対策室です。
一昨年、堺市五か所保育園の仮設舎でホルムアルデヒドによるシックハウス症候群が発生し、当該施設の職員、児童が健康障害をおこし社会問題になりましたが、施工業者がホルムアルデヒドの発生しやすい材質を使ったことが判明して3ヶ月の指名停止処分を受けました。また、今年、6月には堺市五か所保育園保育士4名に全国初の労災認定が判断されシックハウス症候群が公に認知され大きな反響を呼んだのは記憶に新しいことです。
本年6月に堺市の湊保育園で新築園舎のシックハウス症候群の主要な原因物質であるトルエン濃度が、最高で4800μg/m3と国の指針値(260μg/m3)を18倍も上回る結果がでました。園児にもシックハウス症候群の特徴的な粘膜・皮膚刺激症状、中毒症状が発生しており、シックハウス症候群診断基準より、トルエンによるシックハウス症候群の発症と考えられます。
小児は環境への抵抗性や対応能力が弱く、健康障害の影響が大きい年齢層です。また、小児のアレルギー疾患(喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎)の罹患率は30%に及ぶと言われています。特にアレルギー疾患患者はシックハウス症候群に罹患しやすいと考えられます。
私たちは住民の医療を守る堺市は次世代の子供たちの健康を守るという責務を確認して、今回の問題を行政として真摯に受け止め、以下の項目について、早急な対応策を講じていただきますようお願い申し上げます。

1、 保育園への室内揮発性有機化合物の測定を国の策定した指針値以下に改善されるまで定期測定と健康調査を実施してください。
2、 湊保育園のシックハウス対策改良工事に当たっては、シックハウス対策に実効ある材料と施工方法を堺市が責任を持って監督・指導してください。
3、 これらの実行にあたっては、湊保育園保護者会、堺市、湊保育園、施工業者を交えた会議を設置して、協議内容を公開してください。またシックハウス対策に全国で最も実績のある大阪府保険医協会皮膚科部会シックハウス対策室(医学)、NPO・シックハウスを考える会(医学、建築、測定)の意見も取り入れてください。
4、 堺市は堺市内の他保育園施設についても揮発性有機化合物の測定調査と医学調査を実施してください。医学調査は実績のある大阪府保険医協会・皮膚科部会が協力をします。
付:今年度に新築された保育園を優先すること。