高知支部設立のご挨拶 「森林の歴史」
高知支部長 田岡秀昭
緑の砂漠 と言う言葉があります。
日本中どこの山村に行っても豊かな緑に覆われています。森林国日本を実感させる風景です。
しかし、その森林に一歩足を踏み入れると光景は一変します。手入れの全く出来ていない森林
では地面に太陽の光は届かず、裸地と呼ばれる土がむき出しの茶色で暗いまるで砂漠の様な世
界が広がっています。
どうしてこの様なことになってしまったのでしょうか。
第二次世界大戦の戦前、戦中には軍事供出という名目でたくさんの木が切られ、戦後は復興の
ために山が裸になってしまうほど木が使われました。その後世の中が落ち着きを取り戻し始め
ると、緑を回復するため植林が大々的に行われました。その結果1千万ヘクタールという世界
に誇る人工林が出来上がったのです。しかし、その森林の木々は今使われることなく放置され
表面的な緑を持つ森林、緑の砂漠になってしまっているのです。
日本は木の文化の国と言われています。
例えば杉は最も多く植林されていますが、学名をクリプトメリアジャポニカといい日本固有の
樹種で生長が早く、まっすぐに育ち、すぐ(直)き木から「すぎ」と呼ばれたと言われていま
す。生長が早いという収穫上の利点を最大限に生かすため、戦後の荒廃した山々に杉が植えら
れたのです。杉林を悪者扱いする人がいますが、この様なことを考えると誰も責めることなど
出来るはずがありません。そして、杉は柔軟でまっすぐで、加工しやすく家具や樽材に使われ
日本酒に香りを付けるため酒樽に欠かせず、植林が始まったとも言われています。その他、船
用材や土木資材、少し前まで至る所にあった電柱、住宅にはあらゆる部材に使われてきました
なかでも高温多湿の日本でその心材(赤身)は腐りにくくシロアリにも強いため、土台として
たくさん使われてきました。ところが今日本では、木材の自給率は20%を切ってしまってい
ます。グローバル化したなかで、その経済性だけから使われなくなり、経済の森林としての循
環がきれてしまったいま、手入れの費用すら出なくなっています。その結果が 今の森林の危
機なのです。
使われないことによる危機が広がる今、どうすれば使うことが出来るのか。その取り組みは始
まったばかりです。
その一方、ここ高知に於いても、土壌汚染やアスベスト問題と同じようにシック
ハウス症候群に代表される私たちをとりまく環境の問題は、避けては通れない課
題になっています。新築の公営住宅や学校の改修工事後に問題が起きています。
また、潜在的に多くの一般住宅に於いても同様な問題を抱えていると想像するこ
とが出来ます。
このような状況の中で、私たちはシックハウス問題に対して学び、対処するために「シックハ
ウスを考える会・高知支部」の必要を感じました。そしてその活動を通して、
た素材(土佐漆喰や木材など)を使用した健康住宅の開発やシックハウスの諸問題に対応でき
る人材の育成、そして地域に根ざした相談、VOC測定などの活動を通して広く市民の健康に
貢献することを目指したいと考えています。
まだまだ微力な高知支部ですが、これからの活動に皆様方のご助力、ご協力をよろしくお願い
申し上げます。